EVERGREEN
- ユリエス創作
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永遠にいちゃこらしていて欲しいぞユリエス!
…という願望丸出しの、いちゃこら以上エロス以下のユリエス話。
ユーリさんも凄いマイペースですが、エステルさんもかなりマイペース。
なんか気を許しすぎていて、いまいちムードが盛り上がらない中
やっぱり勝手にいちゃこらしています(笑
…という願望丸出しの、いちゃこら以上エロス以下のユリエス話。
ユーリさんも凄いマイペースですが、エステルさんもかなりマイペース。
なんか気を許しすぎていて、いまいちムードが盛り上がらない中
やっぱり勝手にいちゃこらしています(笑
生まれも育ちも下町暮らしのオレは、そんなたいそうなもの
実際見たことなんてないんだけれど。
――例えるならそう、まるで宝石。
きらきら光るエメラルドとか
きっとこんな綺麗な色をしてるんじゃねぇのって
今の今まで思っていた。
EVERGREEN
久々に仲間という仲間が皆、所用で宿を抜け出し
閑散とした夕暮れ時を一人静かに過ごしていた時の事。
する事もなく武器の手入れをしていたオレがふと顔を上げると
鼻と鼻がくっつくんじゃないかと思うほどの距離に
端正な顔を近づけ、エステルがオレの顔を覗き込んでいた。
目の前にあるのは、今にも零れ落ちそうな程くりくりとした大きな緑色の瞳。
長い睫毛と、白い鼻筋。
柔らかな――頬。
何故こんなものが目の前にあるのか。
そもそも出かけていた彼女が、何時帰ってきたのかすらわからなかったが
無意識に左手を持ち上げると、その柔らかな頬をぷにっと掴んだ。
「エステル、一体なにしてるんだ?」
ふにふにと何度かそれを摘み上げたまま、オレは問う。
突拍子もない事ばかりするお姫様だとは思っていたけれど
なんのためにこんな事をしていたのやら。
頬を摘んだまま、暫くそんな事を考えていると
反応に困った彼女が、戸惑いを隠しきれずドギマギとした表情を見せたので
そのマヌケ顔がつぼに入り、オレは暫く彼女の頬をつまみ上げたまま
ぷにぷにと引っ張ってやった。
「うにゃぁ……ゆーり、いひゃいでふ」
「ははは。お前の顔、おもしれぇ」
「ちょ……いひゃいでふからっ、ひっぱうの、やめへくだひゃいぃぃっ」
摘まれた方の目をぎゅっと瞑り、彼女があんまり騒ぐから
肩を震わせ笑いながら、仕方なく指の力を緩めてやる。
本当はいじめついでにもう暫く、柔らかな頬の感触を楽しみたかったのだが
彼女が泣き出してしまっては流石に対処に困る。
――泣いたら泣いたで、慰めてやればいいんだけの話なんだけど。
好きな子ほどいじめたくなるのは
天邪鬼なオレの特性の一つだと割り切ったとしても
その後、今度はべたべたに彼女を甘やかしてしまいそうな自分が居て
どちらかと言えばそっちの方が問題だ。
どうもオレは、彼女の泣き顔にすこぶる弱いらしいから。
下手に突付いて泣かした後、むくれた彼女を相手にして
らしくもない甘い言葉を囁くはめに陥るのは御免だ。
いつも彼女に振り回される振りをしながら、その実
振り回してやる機会を伺っているぐらいがオレには丁度良い。
常に優位に立とうなんて思わないけれど、負けっぱなしは性に合わないのだ。
そんな計算高い考えを隠すように、目の前の桃色の髪の毛を
ぐしゃりとかき回してやると、頬を摩りながら彼女が顔を上げ呟いた。
「ユーリ、意地悪です……ほっぺ引っ張るなんて」
「そりゃお姫様が勝手にオレの顔、覗き込んでるから悪いんだろ?
あんなに顔近づけて。キスでもされるかと思ったぜ」
「キ…!ち、ちがいます!
わたしはただ、ユーリの瞳の色って綺麗だなって思っただけで…!」
勢いよく両手を頬に当てたかと思うと、真っ赤な顔のまま
力いっぱい否定する彼女の姿をみて、微笑ましく思いつつも
内心、少しだけがっかりしたのはオレのほうだ。
――ま、奥手なこいつが自分からキスなんてしたら、星喰みすらひっくり返るか。
残念だけど、そういうやつだ。
しかしこんな男心にも気づかずに、無邪気に人の瞳なんか覗き込んじゃってまぁ。
相変わらず好奇心が旺盛というか、何にでも興味を示しすぎるというか
あまりにも無防備というか……どうせ他には誰も居なかったんだし
それこそ自分からキスの一つでも貰いに行けば良かったかね、なんて。
やっぱり損得勘定で物事を考えてしまう自分は
何処が薄汚れている気がして仕方ない。
だからだろうか。
何にでも裏表なく、無邪気に駆け寄ろうとするこいつを見ていて
羨ましいという気持ちにもなるし、反対に憎らしい気持ちにもなる。
羨望と嫉妬が入り乱れて時に苛々することだってあるのに
それでもそんな彼女だからこそ、己の瞳には好ましく映りこむなんて。
「お前、ズルすぎ」
「ずるいって……ただちょっと、ユーリの瞳の色を見ていただけですよ?」
「それでも。ズルいもんはズルいの」
自分の胸のうちを曝け出さず、相手を責めるような言葉を紡ぐオレのほうが
よっぽど狡猾に違いないのだが、そんな事は当にわかりきった事実なので
今更口には出してやらない。
かわりに胸に巣くう、もやもやとした濁りを晴らす為だけに
オレは彼女の体に手を伸ばした。
「……ユーリ?」
抱き寄せられて、それでも相変わらず訳のわからないまま
きょとんとした表情を崩さず無防備にこちらを見上げるエステルを見て
オレは曖昧な笑顔を貼り付けたまま、その華奢な体をゆっくりと
腰掛けていたベッドの上へと押し倒した。
己の両腕の間に、横たわる彼女の体を閉じ込めたまま
暫くじっと、僅かに揺れる、二つの新緑の瞳を覗き込む。
戸惑いがちに潤んだ彼女の瞳がそっと持ち上がり、オレの視線と絡み合った時。
折角の良いムードを台無しにしながらも、つい素直な感想を漏らしてしまった。
「……お前の目、綺麗な緑色してるよなぁ。
エメラルドとか、こんな感じなのか?」
実物を見る機会なんて、下町育ちの自分には早々ないのだけれど
それでもエメラルドとかいう緑色の宝石はきっと、こんな感じに
透き通っていて、綺麗な色をしているんじゃないだろうかと思った。
しかし今度は彼女が、わずかに小首を傾げたまま
折角の想像をぶち壊しにするような言葉を紡ぐ。
「残念ですけれど、エメラルドはわたしの瞳より百倍は綺麗ですよ。
……エメラルドは緑柱石の一種で、強い緑を帯びた宝石である。
組成はBe3Al2Si6O18。クロムやバナジウムを含むことがあり
アクアマリンは同じ成分の宝石である。硬度は7.5〜8。
比重は2.6〜2.8。それから……」
「わかったわかった、さすが物知りエステルだと褒めてやりたいところだが
生憎オレには、難しい説明をされても何が何だかさっぱりだ」
するならもっとイメージしやすい説明で、簡潔に頼む。
そう言うと彼女は少し眉をしかめて考えこんだ後
再び本を暗唱する時の素振りで口を開いた。
「エメラルドは美しい緑色を表現する上で、慣用句として使われるほど
鮮やかな煌きを持つ宝石の一つで、石言葉は『幸運・新たな始まり』です」
「サンキュ、今度のはなんとなくだがイメージできた」
「それは何よりです。
ちなみにエメラルドは、幸せを呼ぶ石、とも呼ばれているんですよ。
お守りみたく、肌身離さず持っていると良い事がおこるんだそうです」
ほっとしたような笑みを零し笑った彼女の瞳を見て
へぇ、と何気なく気のない返事をしてみせながら
やっぱり彼女の瞳は、エメラルドそのものなんじゃじゃないだろうかと
内心一人ごちる。
――だってオレの幸せは、こいつが運んできたようなもんだったから。
出会って早々、フレンの友人と知るや否や、オレに助けを求めた彼女。
そのせいで騎士団に追われるわ、親友に斬りかかられるわ
わりと散々な目にもあってきたけれど。
下町でずっと燻り続けていたオレに、一つの転機を与えてくれたのは
間違いなく目の前にいる彼女だ。
こいつがいなければ、今もオレは下町で
呑気にその日暮らしをしていたのかもしれない。
人の命を己の手にかける事もなかったかもしれない。
だけど――オレがやるべき事を見つけ、人を殺めた後
怯えながら、この薄汚れた手を握り締め
一番最初に受け入れようとしてくれたのは、こいつだった。
――オレの心は、お前のお陰で救われたんだよ。
オレを影ながら支えてくれる、若くて瑞々しい彼女。
その春の野に広がる新緑の色を宿した瞳に、何度助けられただろう。
そんな事を考えながら、彼女の前髪を軽くかきあげて言った。
「幸運を呼ぶ石…ね」
「はい。素敵な名前ですよね」
「そうだな」
顔を上げ、優しく見つめ返してくれる翠の瞳は、今もここにある。
二人きりの部屋で男にベッドに押し倒され
それでもいまいち警戒する様子もない彼女を見ていて
つい笑いがこみ上げた。
「……ユーリ? どうしたんです?」
彼女に覆いかぶさったまま、肩を震わせベッドに身を沈めたオレを見て
やっとエステルは怪訝そうな声をあげたけれど、オレはかまわず笑い続けた。
本当におかしくて仕方がない。
「お前って、どうしてそんなに無抵抗なわけ?」
「無抵抗……?」
「そう。オレだって男だぞ。わかってる?」
「はぁ……それはわかってますけれど……」
相変わらずマヌケな台詞しか返さない彼女は
多分オレの言葉の意味を、まったく理解できていないんだと思う。
ここまで鈍いと、もう手を出すどころか笑ってやる事しかできなくて。
くつくつと笑うオレの姿を、困ったように見つめながら
彼女が呟いた言葉をきいて、オレは更に大爆笑してしまった。
「私、ユーリが女の人だったら困ります……。
女の人が女の人を好きになるのって、レズって言うんですよね?」
「はははっ、そうらしいな」
「初恋の人が女の人って、不毛ですよね?」
「そりゃ不毛だろ」
――同性同士じゃ、普通のエッチできないし。
余計な一言だけは、こっそり心の中でだけ呟く事にする。
そんな邪まな一言を一切知らない彼女は
オレの背中に手を回し、そのままぎゅっと抱きつくと
まるで子供が駄々を捏ねるようにオレに言い募る。
「だったら。やっぱりユーリは男の人でいてください。
じゃないと私困ります」
「オレの事が好きだから?」
「そ…それは、その。ノーコメントです」
「あっそ、そりゃ残念。
好きだって言ってくれたら、このままキスしちゃおうかなと思ったんだけど」
「えぇ!?」
「あんたオレのこと、男として意識してくれてないみたいだし。
今はやっぱやめとくわ」
「そ、そんな……うぅ、ユーリはやっぱり意地悪です……」
ぼっと顔を赤く染め、残念そうに俯いた彼女の瞳は
それでも変わらず澄んだ緑色をしていて。
長い睫毛に覆われて、少し隠れてしまったその色を見つめながら
オレの心は、言い様のない安堵感に包まれていた。
周りがどんなに変化を遂げても、彼女の本質だけは
そのエメラルドの瞳のように、いつまでも変わらないでいてくれるなら
オレはこれからも幸せでいられるような気がしたからだ。
――永遠に変わらない色が、ここにある。
彼女の瞳を見て、ただ一つの事実を確認すると
あとはもう、もたらされた安心感に擦り寄ったまま
その小さな体を抱え込むようにして目を閉じる。
「あの……ユーリ?」
「悪ぃ、ちょい眠くなった。
みんな帰ってきたら起こしてくれ」
「起こしてくれって……こ、この状態で寝るんです……!?」
「仮眠とるだけだから。皆帰ってきたら、解放してやるよ」
出来ることなら、本気で肌身離さず傍に置いておきたいけれど
それはまぁ、無理だろうから。
たまにこうやって、幸せを呼ぶ石を
時々傍に置いて眠るぐらいは、許してほしい。
――例えば、ちょっと良い夢をみるための、お守り代わりとして。
優しい温もりに身を委ねたまま、浅い眠りの中で見た夢は
どこまでも鮮やかな、みどりのゆめ。
エメラルドによく似たその色は、目覚めたオレの胸元で
恥ずかしそうに顔を染める彼女の瞳の中にもはやり健在で。
ああ幸せだな、なんて。
帰ってきた仲間たちに小さく冷やかされながらも
寝ぼけた頭でぼんやり彼女の瞳を見つめた後
ゆっくりとひとつ、大きな伸びをしながら思ったのだった。
- [2009/01/06 02:48]
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